胡床はもともと、「胡」の文字通り中国から見て周辺国で使用していた折り畳みの椅子です。「胡」の字を付ける他の語としては、胡瓜(キュウリ)、胡椒(こしょう)、胡弓(こきゅう)などがありますが、すべて中国から見て異国由来の文化です。
このように中国の外部から中国に入ってきた胡床ですが、それが中国で定着していきます。今日でも、中国では携帯用の椅子として、外出時に中国人が持ち歩いている姿を見かけることがあります。
この胡床が日本に伝来したのは、かなり古く、古墳時代から使われていたようです。平安時代には、胡床のほかに床几とも呼ばれていました。主に貴族が使うものでしたが、その後、神事でも使われるようになり、携帯しやすいことから武士も陣中や狩りの際にも使用され、座る部分に布や革を張って日本独自の進化を遂げました。
胡床の座り方ですが、神社等の宗教儀式では、横棒の上にお尻を乗せるのが正式で、これを宮座りと言いますが、実際には布部分にお尻を乗せて、横棒が腿の下にくるように座られる方がほとんどです。一方、横棒をお尻の両側にして座るのが、武士などの座り方で、これを武者座りと言います。なお、格式の高い神社でも、武者座りの座り方をすることもありますので、最近は形式にあまり拘わらなくなってきています。
胡床のメリットは、持ち運びがしやすく、収納に場所を取らないことです。神社では座礼と言って、床に正座かあぐらで座って神事を行うことから、立礼で胡床を使うことが増えてきました。その理由は、座礼では膝などの足腰に負担が掛るために、高齢化と生活様式の変化に伴って、胡床を積極的に採用する神社が増えてきています。また、寺院でも胡床を使われるところが増えてきています。
神社や寺院を含めた宗教団体以外でも、本来なら畳や板の間で床に座っていた日本の伝統的文化での胡床を採用するケースも増える傾向にあります。華道、茶道といった畳に正座が当たり前も、当たり前でなくなりつつあります。理由は、神社同様に、高齢化と生活様式の変化です。武道においても、剣道、柔道、弓道等でも胡床を採用することが増えてきています。また、日本舞踊、雅楽、歌舞伎、能楽でも、演者も観客も胡床を使われるようになりました。
一部ではありますが、アウトドアで使うスチール製のの折りたたみ椅子の代わりに胡床が使われることもあります。
更には、お店や一般家庭でも、携帯できて片づけしやすい簡易的な胡床は重宝されて使われています。
弊社は、胡床のトップメーカーとして、胡床の製作販売を行っていますが、一人用の胡床はもちろんのこと、二人用、三人用、四人用、五人用の胡床も、塗装の有無、布もご希望に応じてオーダーすることができます。
和の建築、和の部屋、和の文化と、高齢化洋風化に対応した椅子が胡床ですので、今後、ますます需要が増える見込みです。